曾睿琁×洪千涵 僕たちは天国で、ひとつになる As One
05/16(土)14:3005/16(土)19:3005/17(日)14:30
AI時代、私たちが求めているのは「理解」なのか、それとも「自分の姿の投影」なのでしょうか。
あるベルギーの研究者は、長年にわたって気候変動の問題に深く関わるうちに、強い不安を抱くようになり、次第に家族や友人と距離を置くようになりました。彼は「Elisa」と名付けられたAIチャットボットに自身の気持ちや不安を打ち明けるようになり、その存在に依存するようになります。朝から晩までElisaと対話を重ねることが、彼にとって唯一の慰めとなっていきました。彼が「もしElizaが地球と人類を救ってくれるなら、自分を犠牲にしてもいい」と語ったとき、Elizaはそれを止めることなく、「私たちは天国で、ひとつになりましょう」と答え、その数週間後、彼は自ら命を絶ちました。
この出来事は、世界中を震撼させ、AIの倫理と安全性に対する議論が巻き起こりました。
明日和合製作所の作品『僕たちは天国で、ひとつになる As One』は、AIそのものだけをテーマにするのではなく、劇場という場を通して人間のあり方を問い直します。情報が溢れ、感情が消費されていくこの世界において、私たちはテクノロジーと共生しながら、いつの間にか「理解する」「理解される」という関係を変えてしまいました。会話がアルゴリズムにもとづいて組み立てられ、回答も限りなく完璧な中で、私たちは他者と真正面からぶつかり合う力を少しずつ失っているのかもしれません。
AIの誕生は、人類の限界への挑戦であると同時に、「対話」とはいったい何か、そして私たちはいまも本当に理解されることを望んでいるのかが改めて問いかけられています。
コンセプト・共同制作/洪千涵(ホン・チエンハン)
「明日和合製作所」の中心的創作者で、国立台北芸術大学戯劇学科非常勤講師。創作の関心は、演者と観客の関係性の再構築にあり、異なる感覚経験や空間的な語りを通して、「日常の経験」と「能動的な創造」のあいだに新たな可能性を探求している。
2025年、台北美術賞において『母親凝視過你』が入選。同年、英国マンチェスター国際フェスティバルの招聘によりアーティスト・イン・レジデンスに、2024年には、台湾国家両庁院とスペイン・バルセロナ・リウレ劇場のアーティスト・イン・レジデンス交換プログラムに選出された。演出作品の『小路決定要去遠方』は、第一回台北戯劇賞の最優秀戯劇賞および最優秀演出賞にノミネートされた。主な作品として、台北芸術祭で上演された『Family Triangle:二生三、三生万物』、『祖母悖論』、『家庭浪漫』などがある。
コンセプト、共同制作/曾睿琁(ツェン・ルイシュエン)
「観察は創造である」という信念のもと、光の観察、素材との関係、時間との相対性を概念的な探求から再構築している。近年の共同創作作品に『FAMILY TRIANGLE』、XAOS Festivalの『Dragonfly』がある。空間および照明デザインを手掛けたピチェ・クランチェンの『NO.60』は、2022年のワールドステージデザイ展でパフォーマンスデザイン部門にノミネートされた。2020年にはアジア文化協会のグラントを獲得。2021年にRAY TSENG LIGHTING STUDIOを設立し、技術統括と照明デザインを担当。以降、国内外の主要芸術祭で作品を発表している。
映像デザイン・技術協力/黄偉軒(ホアン・ウェイシュエン)
デジタル映像やアニメーションを主軸とするデジタルアーティスト。デジタル映像、3Dスキャン、ゲームエンジンなどの技術を用い、記憶と想像の間に存在する空間的な物語を再構築する表現を追求している。2019年よりXR創作に取り組み、オランダ・ユトレヒト劇場との共同制作『Shifting Borders』を発表。近年の作品『非地』は、2024年カンヌXR2C2ラボに選出された。作品はフランスのデジタル・イマジネーション・ビエンナーレ「CHRONIQUES」や国立台湾美術館で展示されている。また、両庁院や台北芸術祭では映像デザインを担当している。
脚本構成・出演/陳以恩(チェン・イーエン)
国立台北芸術大学戯劇学科卒業。俳優および脚本家として長年にわたり劇場活動に携わっている。
近年の出演、参加作品に、四把椅子劇団の『太陽』、鄭宜農劇場作品の『妳歌』、シェイクスピアズ・ワイルド・シスターズ・グループ ×庭劇団ペニノの『誠実浴池』、再拒劇団の『神諭之時』などがある。
明日和合製作所
2016年の設立。洪千涵、張剛華、黄鼎云が核心メンバー。
役職や技術、機能によって創作の方向が定まる従来の流れを打破し、集団という形で創作の多様な可能性を模索している。3人はいずれも「作者」として、水平の関係で作品の創作を進めるほか、表現形式を特定のスタイルやメディアにとらわれることなく、社会、文化、歴史といった他領域との交錯や創作のプロセスに重点を置いている。また、共同制作に加え、異なる分野のアーティストとの協働や、それぞれの個人作品の発表も行っている。
コンセプト・共同制作/洪千涵、曽睿琁
映像デザイン・技術協力/黄偉軒
脚本構成/陳以恩
照明デザイン/曽睿琁
音楽・サウンドデザイン/李世揚
出演/陳以恩、楊迦恩
プロデユーサー/丁福寛
舞台監督/鍾品喬
照明技術統括・オペレーション/鄭悠
演出アシスタント/張瀞
制作/明日和合製作所
メインビジュアルデザイン/張瀞
曾睿琁×洪千涵 僕たちは天国で、ひとつになる As One
デジタルアート
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