歌劇院の建築コンセプトは、設計を手掛けた伊東豊雄氏がポルトガルを旅行中に耳にした野外コンサートに着想を得ています。街かどは祝祭のような歓びに満ち溢れ、音楽の調べと人々が素晴らしい形で一体となっていました。そこで伊東氏は構想の際にこのコンサートのコンセプトを取り入れ、「建築を聴く」を原点として建物の輪郭やあちこちに洞窟のような穴と呼吸する穴を通しました。芸術の息遣いがこの建築中に満ち溢れ、芸術を日常のものにしてくれます。
伊東氏は劇場の外観を、より自然に近い「いきもの」として構想しました。これまでの枠組みを飛び出し、幾何学的ではなく自然な有機体らしいラインの構造物にすることで、わたしたちが忘れていた活力と創意を取り戻そうとしたのです。そこで、起伏が連なるカーブを描いた曲面壁を主な構造体とし、さまざまな大きさの洞窟のような空間を生み出しました。ここに身を置くと感覚が研ぎ澄まされ自然の変化が感じられます。大きなガラスのとばりと境界のない空間では内と外が融合し、大自然に開かれた建築には陽の光、空気、水、音が駆け抜け、芸術が集まり、漂い、万物が生まれては消えていくように命の営みがいつまでも続くことでしょう。