真快楽掌中劇団『壵』
11/15(土)14:3011/15(土)19:3011/16(日)14:30
「壵」は、「壮」の旧字で、「三人の士」が集まることで「壮(つよ)くなる」を意味します。『壵』は明代の小説家・馮夢龍による『喩世明言・羊角哀捨命全交』を題材とした作品です。物語は、義兄弟の契りを結んだ左伯桃と羊角哀が、賢明な君主への恩返しのために楚国に赴く途中、暴風雪に見舞われる場面から始まります。左伯桃は自らの命を犠牲にし、弟分の羊角哀を生かします。志を果たした羊角哀は、山中に義兄を手厚く葬りますが、その夜、夢に現れた左伯桃は、秦王を討たんとした「烈士」荊軻の亡霊に苦しめられていると涙ながらに訴えます。義に厚い羊角哀は義兄の無念を晴らすべく、自ら命を絶ち黄泉の国へ向かい、荊軻と死闘を繰り広げます。この物語は『二鬼戦荊軻』とも呼ばれています。
真快楽掌中劇団による『壵』は、伝統的な「彩楼(伝統的な布袋戯の舞台装置)」の枠組みから脱却し、人形と人形遣いが一体となる表現を追求しています。団長・柯家財は語り部となり、観客を陰陽を自在に行き交う天馬空想的な物語の世界へと誘います。また、「地母娘娘(大地の女神)」のキャラクターを加え、女性や自然の視点から物語を語り、その柔らかな歌声で左伯桃と羊角哀の犠牲を優しく包み込みます。本作は、生前に功績を残し崇拝され、死後に追贈され祭られるといった東洋的な英雄像とは一線を画します。『壵』がより強調するのは、彼らが“英雄”となるまでの旅路です。自己犠牲を選んだ「賢士」左伯桃、友情のために命を捧げた「義士」羊角哀、そして、秦王暗殺を目論んだ「烈士」荊軻。彼らがいかにして、それぞれが信じる道徳的価値のために奔走し、殉じ、死守し、抗い続けたかを描きます。
真快楽掌中劇団
真快楽掌中劇団は、三世代にわたって受け継がれてきた家族劇団。創立者の江賜美は台湾で初の布袋戯人形師で、2022年には文化部より「重要伝統表演芸術布袋戯保存者」として「人間国宝」に認定され、93歳になった今もなお、現役で舞台に立ち、創作、上演を続けている。団長の柯加財は、幼少の頃より布袋戯を学び、60年以上にわたり布袋戯の演出や出演に携わってきた。現在は台湾布袋戯戯劇公会の代表を務め、郷土文化の保存や古典掌中戯(布袋戯)の精神継承に尽力している。三代目の柯世宏と柯世華は、掌中戯の芸術を受け継ぎながら、ジャンルやメディアの枠を超えた公演を展開し、幅広い支持と好評を得ている。三世代にわたり掌中戯文化の継承と発展に貢献してきたその歩みは、台湾布袋戯界において今や伝説的な存在となっている。
近年來,劇團製作的「真快樂三部曲」以家族戲班為創作素材的《孟婆.湯》、《一丈青》、《王爺飯》,或是新創的《壵》、《My Puppet My Life》、《掰》等作品,展現出劇場布袋戲的新風格。並以《孟婆.湯》(2018)與《王爺飯》(2022)榮獲傳藝金曲獎「最佳年度演出作品獎」之殊榮,同時於2018年與2019年代表臺灣至法國參與法國外亞維儂藝術節及世界偶戲藝術節。
近年、真快楽掌中劇団は「真快楽三部作」として、家族劇団を題材にした『孟婆・湯(The Soup of Reincarnation)』『一丈青(Cycle of Gangho)』『王爺飯(The Lord’s Ban-quet)』をはじめ、新作『壵(Blood Brothers)』『My Puppet My Life』『掰(ADUE)』などを次々と発表し、布袋戯にスタイルを確立している。なかでも『孟婆・湯』(2018)と『王爺飯』(2022)は、伝統芸能金曲賞の「最優秀年間上演作品賞」を受賞。2018年と2019年には、台湾を代表してフランスのアヴィニョン・オフ(Avignon Off)」、および世界人形劇芸術フェスティバルに参加し、国際的な評価を得た。
脚本・舞台コンセプト/柯世宏(クー・シーホン)
真快楽掌中劇団の行政総監・演師。台湾布袋戯界の先駆的な女性人形師・江賜美の孫にあたる。幼少期から人形劇布袋戯劇団の環境で育ち、布袋戯を観ること・学ぶこと・創ることが生活の一部だった。米国コネチカット大学にて人形劇の修士号を取得、その後、国立台湾芸術大学応用メディア芸術研究科でも修士課程を修了している。また、アジア文化協会(ACC)の助成を受け、2年間にわたり米国で研修や国際交流活動に参加した。近年は国内外の芸術祭に多数参加するほか、各国の人形劇や舞台芸術の研修にも積極的に取り組み、異分野の素材の融合を通じて、多様で異文化的な舞台の感動を創出している。伝統と現代が交錯する中で、布袋戯に新たな可能性を切り拓くことを目指している。
演出・舞台コンセプト/王世偉(ワン・シーウェイ)
パリ第三大学(ソルボンヌ・ヌーヴェル)舞台芸術科にて修士号および博士号を取得。ヨーロッパの舞台芸術文化に精通しており、舞台専門誌『PAR表演芸術』に定期的に寄稿している。また、フランスの演出家、ジョエル・ポムラに関する翻訳書『舞台書寫:解讀喬埃.波默拉』、『喬埃.波默拉的童話三部曲』を出版。現在はパリを拠点に、翻譯、学術研究、文化交流活動に従事する傍ら、自身の創作活動に取り組んでいる。2020年には『群衆』で台新芸術賞パフォーミングアート賞を受賞した。
脚本/林乃文(リン・ナイウェン)
台北芸術大学演劇科ポスドク研究員、国家文化芸術基金会「表演芸術評論台」レジデンス劇評家。劇作、演劇評論、ドラマトゥルクなど多岐にわたる分野で活躍している。近年の主な脚本作品には、真快楽掌中劇団の『掰(ADUE)』、野孩子肢体劇場の『神奇女郎』、そして同黨劇団による『金控迷霧(The Fog of Financial Holdings)』や『阿卡曼儂(Agamemnon)』などがある。
真快楽掌中劇団『壵』
伝統戯曲|人形劇
上演時間約70分、途中休憩はありません
台湾語(台語)発音、中文・英語の歌詞字幕付き
600
主催/台中国立歌劇院
※上演時間約70分、途中休憩はありません
※推奨対象年齢、7歳以上