映像によってオーケストラに一つの音が加わる。ファン・ヴルクムは『火の鳥』で、音楽と映像の新たな融合を示した。この大胆なプロジェクトは、世界の交響曲の演奏に新たな生命を吹き込んだ。－オランダ誌「NRC Handelsblad」

映像による物語は興味深くおもしろい、不可解ですらあるが、見事に観客の心を掴んでいる。－英「The Arts Desk」
 

流行の映画オーケストラコンサートは、すべてオーケストラが劇場で映像に合わせて演奏するのですが、オランダの映画監督ルカス・ファン・ヴルクムは、こうした習慣を覆し、ソフトウェアを使用することで、映像と音楽の主従関係を反転させ、古典的な物語と音楽を映像で再解釈しました。音楽が描く物語を新しく映像叙事に変換し、劇場でコンピューターソフトを操作し、映像が現れる速度をオーケストラの指揮の解釈によって調整することで、オーケストラは思いのままに演奏できるようになります。同等となった音楽と映像で、素晴らしい物語を一緒に伝えましょう。

ラヴェルのバレエ音楽『ダフニスとクロエ』は絢爛で多彩。原作の神話の世界を現代の都会に置き換えます。女主人公のクロエは欲望と愛情の間で迷い、最後には虚栄を捨て自分探しをします。ストラヴィンスキーはロシアの民話に基づきバレエ音楽『火の鳥』を作曲。ここでは、幻想的な写実的映画の手法で、時空の渦の通り抜けを彷彿させます。ダレル・アンが指揮する国立台湾交響楽団により、音楽と映像が即座に交わり、映画とオーケストラが幻想的な旅路を繰り広げます。

モーリス・ラヴェル『ダフニスとクロエ』組曲

イーゴリ・ストラヴィンスキー：『火の鳥』

指揮／ダレル・アン
シンガポール生まれ。現在は四川交響楽団の芸術監督及び首席指揮者。2007年、ブザンソン国際若手指揮者コンクールで優勝、観客賞、オーケストラ賞の三大賞を受賞。2008年には、トスカニーニ国際指揮者コンクールで優勝し、一躍国際的に名前が知られるようになった。フランスのブルターニュ管弦楽団の音楽監督、シンガポール国際音楽フェスの芸術監督、シンガポール交響楽団の副指揮者を歴任したほか、サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団、ベルリン放送交響楽団、ミュンヘン交響楽団、ウィーン室内管弦楽団、ルクセンブルグ室內管弦楽団、コペンハーゲン・フィルハーモニー管弦楽団、バンクーバー交響楽団、NHK交響楽団等の多くの管弦楽団と共演している。

 
製作及び映像独奏／ルカス・ファン・ヴルクム
オランダのユトレヒト芸術学校卒業。映画監督専攻。ホルンを専攻。交響楽をテーマとしたドラマ演出及び音楽ドキュメンタリーを得意とする。アルヴォ・ペルト（Arvo Pärt）、ヴィレム・イェツ（Willem Jeths）、ミシェル・ファン・デル・アー （Michel van der Aa）等の作曲家を主人公としたテレビドキュメンタリーの演出を手掛けた。映画『マーラー：私はこの世に捨てられて（Mahler: Ich bin der Welt abhanden gekommen）は、「ネーデルランド・フィルム・フェスティバル」で封切られ、パリのルーブルでも上演された。2007年にオランダフィルムファンドの短編映画『To Anna』を監督。以降、ドラマ作品を中心に撮るようになった。また、クラシック音楽に描かれている物語を映画のシーンとし、『死の島』(The Isle of the Dead, 2011)、『火の鳥』(Firebird, 2014)、『ダフニスとクロエ』(Daphnis et Chloé, 2017-18)などのSymphonic Cinemaシリーズを制作している。

国立台湾交響楽団
1945年に創立した台湾でもっとも歴史のあるオーケストラ。拠点を台中の霧峰に置く、ハード、ソフトともに完璧なオールラウンドなオーケストラ。歴代の団長が築いた基礎をもとに、現在の劉玄詠団長の指導の下、多くの公演を行ってきたほか、多数の国際的なオーケストラや音楽家とも共演。前芸術顧問の水藍、及び簡文彬の指導の下、基礎を築き、2019年より、水藍が再びプリンシパル・ゲストコンダクターに就任した。古い伝統から学び、それを新しい時代へとつなぐことで、「精緻」と「秩序」がともに重視され、「クラシック」と「クリエイティブ」もともに十分で、台湾の音楽がある生活レベルが向上し、社会が穏やかで美しくあることを目標としている。