インターネットの宿泊予約サイトの手違いにより、3人の女性は、貴重な休暇にもかかわらず、台風のために同じ部屋から出られないまま過ごすことになりました。思いがけないことに、意外にも、それぞれの人生の真相を解き明かすことになります……

王靖惇は、2020年のオリジナル作品『如此美好（これほどまでに美しく）』では、父親による長編のモノローグの手法で、孤独とともに踊る人生最後の道のりと、亡妻とのさまざまな記憶を取り上げました。2024年、王靖惇は、母親が20年以上病床にあるライフストーリーをもとに、新作『美好如此』を、女性の視点から、同じ物語のコンテキストにおいて並行する記憶を、母、娘、そして介護にあたる外国籍の女性を主要な登場人物として書き上げました。2つの戯曲は、叙事はそれぞれでありながら、相互に絡み合っています。同じような水槽をメインビジュアルとし、ジェンダー、家族の情、新住民、人生といったテーマに対しても探究を広げています。

『美好如此』は、互いを知らないと思っていた3人の女性が、貴重な休暇に偶然同じ民宿を予約し、台風のために、長い夜をともに過ごすことになるという物語です。嵐のなか、彼女たちは互いの過去に触れたところ、思いがけず、それぞれの過去が交錯します。風雨が収まる前に、予想もしなかったことに、それぞれの人生の謎が解き明かされます……。3人はまるで3つの孤島のように、それぞれの人生の困難と試練に向き合うことになり、常にともにあり、理解される可能性を探し求めます。

脚本・演出／王靖惇（ワン・ジンドゥン）

台湾大学戯劇系卒業、戯劇大学院修士。台中国立歌劇院第1期レジデンス・アーティスト。現在はもっぱら舞台芸術の創作に携わっている。脚本、演出、パフォーマンスは、オリジナル脚本と台湾を背景とすることを創作の核とし、台湾の現代文化、人文主義、精神性、社会的な問題を反映したものを得意とする。作品は、北京、上海、広州、深圳、マカオで上演され、『狂起』では、2017 年のバンコク・シアター・フェスティバルで、最優秀脚本賞、最優秀演出賞、最優秀アート・ディレクション賞、最優秀ムーブメントベースパフォーマンス賞を受賞。脚色・演出作品の『病号』は、2019年の烏鎮演劇祭で招待公演が行われた。著書に『如此美好：王靖惇脚本集』。脚色・演出を行った最近の作品としては、動見体『如此美好』、故事工廠『七十三変』、衛武営5周年プログラム『但是又何奈』（演出）がある。シナリオ作品としては、映画『成功補習班』、明華園総団の『乩身』、『歩月火焼』、表演工作坊の『外公的咖啡時光』、『遇見自已』などがある。

動見体 M.O.V.E. Theatre 

2006年冬、芸術監督で舞台演出家の符宏征によって立ち上げられた。コアアーティストたちは、戯劇、音楽、舞踊というさまざまなジャンルの出身者で、「動き、観察、実験」を舞台における身体的な劇場美学創作のベースとし、総合芸術の実践を芸術的ビジョンとする。創作作品を観客と共有することで、観客との間で共通の視線が交換、拡大され、変容する。作品では詩的な舞台言語を用い現代人の精神性を探り明らかにしていく。作品テーマは文学、神話、歴史、社会など多岐にわたり、さまざまな現代アーティストとの領域横断的な実験的創作も行う。設立から今に至るまで、40以上の劇場作品を発表するとともに、国際交流公演にも何度も招かれ、卓説した創作力をと芸術的な成果を展開している。