ベルリン『The Making of Berlin』
12/12(金)19:3012/13(土)14:3012/14(日)14:30
ノンフィクションの衣を纏った、無秩序な音楽の宴
『The Making of Berlin』は、第二次世界大戦末期にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が計画した、戦時下最後の演奏会を描いた作品です。彼らはワーグナーの楽劇『神々の黄昏』より「ジークフリートの葬送行進曲」を演奏し、その模様はドイツ国営放送により生中継で放送される予定でした。しかし、連合軍の空襲が激化するなか、楽団は、演者を7つの防空壕に分散させ、各所から同時演奏しようとしますが、技術的な問題があり、結局実現には至りませんでした。時は流れ2016年、当時の楽団の舞台監督だったフリードリッヒ・モール(Friedrich Mohr)が、偶然見たベルギー・アントワープ出身の劇団 BERLINの作品を見たことで、かつての計画を実現させたい、という気持ちに火がついたのです。
その後のインタビューで、モールはより多くの真相を語ります。1933年にナチスが台頭すると、ベルリン・フィルはナチス政権の宣伝省の管轄下に置かれ、ユダヤ人の作曲家の作品の演奏を禁じられたほか、ユダヤ人の団員も解雇されました。モールは、6人のユダヤ人団員が解雇された当時、他の団員が誰一人抗議の声を上げなかったことを振り返ります。そして、解雇されたユダヤ人団員のひとりが「私は敵の言葉ではなく、友の沈黙を忘れない」と言ったこと、そしてそれによって「勇気がなかった者」という悔いを一生背負うことになりました。
『The Making of Berlin』は、ベルギー・アントワープ出身の劇団 BERLINの「Holocene」シリーズ最終作です。モールの物語を通して、歴史、記憶、そして救済を探るこの作品は、独特な風格で虚実を織り交ぜ、また映像と劇場パフォーマンスを融合させることで、ベルリンという都市に敬意を表し、その歴史が残した傷跡にも深く思いを馳せます。2022年の初演では高い評価を受け、パリ、ローマ、ベルリンなど各地で巡演を行っています。オランダ・ハーグでの公演では、ちょうど5月4日の「戦没者追悼記念日」を迎え、開演前に劇場ロビーにおいて2分間の黙とうを捧げ、第二次世界大戦の犠牲者を追悼しました。
ベルリンBERLIN
ベルギー出身の芸術監督イヴ・ドゥグリース、バート・バエル、カロリーヌ・ロシュリッツにより2003年に設立されたパフォーマンス・シアターで、ドキュメンタリーと演劇の交わる所を探求している。作品は多くの場合、ある都市、何気ない出来事、ある人の証言など、現実の題材を基に作品を創作している。映像、生演奏、パフォーマンス、インスタレーションなどを組み合わせることで、独自のドキュメンタリー演劇体験を生み出している。設立以来、主に2つのシリーズに取り組んでいる。一つは、ある都市や村を舞台に、人と環境、歴史、記憶との関係を描く『Holocene』シリーズ。もう一つは、実際に起きた特異な出来事を通じて、現代が「虚無」にどのように向き合うのかを問う「ホラーヴァキュイ」(Horror Vacui)シリーズである。
ベルリン『The Making of Berlin』
演劇
600/900/1200/1500
※上演時間は約110分。途中休憩はありません
※映像には複数の言語が入り混じって登場します。中国語および英語の字幕が表示されます。
※推奨対象年齢、7歳以上