亀山島はどうして蘭陽平原を見て涙を流しているのでしょうか。

亀山島が涙を流している、という話を聞いたことがあるでしょうか。昔々、宜蘭の沖合に水晶の竜宮城があり、東海龍王の愛娘・カバラン姫が住んでいました。東海龍王は、世界中で一番優れているのは彼ら龍族だと思っていたので、カバラン姫が他の種族の者と交流するのを禁じていました。ところが、カバラン姫は通学に付き添ってくれていた逞しいカメ将軍と恋に落ちてしまいました。卒業式の日、東海龍王は姫を西龍王の王子と結婚させると告げたのですが、それを知ったカバラン姫はカメ将軍と駆け落ちをしてしまいます。大軍を率いて追いかけてきた龍王に、カメ将軍は巨大なカメに変身して立ち向かいますが、龍王の魔法によって石に姿を変えられ、海に浮かぶ島になってしまいました。こうして、永遠に涙ながらに陸を眺めることしかできなくなったのです。

風神宝宝児童劇団は、子供たちに台湾各地に伝わる昔話を知ってもらいたいと考えています。この『カバラン姫とカメ将軍』は、宜蘭に伝わる「亀山若崁頭、大雨隨時到」（亀山島に雲がかかれば間もなく大雨が降る）という諺をもとにしており、蘭陽平原と亀山島について紹介する物語です。音楽に強いこだわりを持つ風神宝宝劇団は、一貫して台湾の伝統芸能である歌仔戲の曲調をベースに編曲しています。もうひとつのこだわりは、台湾語がメインで中国語をサブ言語とし、子どもでもわかりやすい言葉を選ぶこと。そこに歌やダンス、現代の流行のエッセンスを取り入れることで、楽しく味わい深い作品に仕上がっています。

プロデューサー／陳昭賢（チェン・ザオシエン）

風神宝宝児童劇団団長。2012年、伝統演劇を根付かせるため、子どもたちに伝統演劇を紹介する「風神宝宝児童劇団」を結成し、芸術の存続を願うプロジェクトを立ち上げる。2016年には「台湾廟口芸術国際移動プロジェクト」を推進し、伝統演劇、舞踊、陣頭、客家劇などを携えてルーマニア・シビウ国際演劇祭に参加し、台湾の廟文化を国際舞台で披露した。2018年から明華園総団のプロデユーサーとして、歌仔戲（台湾オペラ）に文学や漫画などの要素を取り入れた作品を制作。また、セルフメディアや漫画展への参加などによって若い世代へのアピールを積極的に行っている。現在は若い世代の伝統芸能への参加を推進するため、バーチャル歌仔戲体験などを積極的に計画している。

演出／許栢昂（シュ・バイアン）

中国戲曲学院戲劇・影視学修士。戯曲演出家。

中国戲曲導演学会会員、台湾芸術大学戲劇学士で専攻は演出。国光芸校京劇科第六期生。立ち回りを主とした役である「武生」を得意としている。栢優座の座長で、演出も行う。京劇の要素を舞台劇に取り入れた独創的な作風が特徴で、32の作品の版権を持つ。『独、角、戲-吉嶽切』『悪虎青年Z』『降妖者齊天』『大年初一前晚的那頓飯』『多情剣客無情剣』『消失的六期生』で、台新芸術賞に6回ノミネートされ、大稲埕青年戲曲芸術節へも6回参加を果たしている。また『椅子』では、日本の第5回利賀アジア演出家フェスティバルに参加。2022年にはフランス国立ダンスセンターでCamping Asiaの講師を務めた。これまでの作品で台北芸術節、台北兒芸節、台南芸術節などへの参加を果たしている。その他、一心戲劇団、風神宝宝兒童劇団、春美歌劇団、明華園戲劇総団、春河劇団、風動室内楽団、明華園天字団、少年歌仔三部曲等の多くの作品の指導も行っている。父親でもある。

劇団／風神宝宝児童劇団

2012年に結成された風神宝宝児童劇団は台湾初の伝統演劇と地方の伝説に特化した児童劇団で、これまでに台湾中の大小合わせて数百に及ぶ公演を行っている。

伝統演劇はその存続のため、舞台の上下、演者、観客を問わず、長く受け継がれていかなければならない。そこで、西洋を主とした外来文化が氾濫するこの現代社会で、台湾の子供たちに、どうやったら自分たちの土地の文化に興味を持ち、より深く理解し、好きになってもらうかを「風神宝宝」の究極の目標としている。