私は誰？何のために戦うのか？

ジャーナリストの黄君は、草木が生い茂り荒涼とした森の中で、偶然ルカイ族の青年、杜雄に出会います。彼について故郷の屏東に戻ったところ、時とともに失われていた物語が明らかになります。杜熊の家の男たちは、4代にわたって自らの部族のために戦ってきたのですが、日本軍、共産党軍、国民党軍に強制徴用され命を落とした者もいました。こうした憤りとアイデンティティの喪失を国の支配者が変わっていくなかでの、どうしようもないやるせなさを演じます。二人は月明かりの影で、帰ってきたルカイ族の祖先の霊と虚実の合間に談笑します。このとき、ルカイ族の石造りの家屋である石板屋では、戦争の記憶や祖先の霊の記憶といった歴史の記憶がうずまきます。

「戦士，乾杯！」は作家黄春明の作品です。著名な文学の解釈に力を注ぐ「曉劇場」の鍾伯淵の演出で、2016年の「共融劇場」の『魚・猫』に続き、二人が再びタッグを組んだ作品。物語の原点を訪ね、ルカイ族の俳優をキャスティングし、ルカイ語、日本語、華語を織り交ぜた叙述で、忘れられた部族の歴史を再現します。

暁劇場Shinehouse Theatre

2006年の設立。現在は「万華糖廍文化園区」を拠点に「万華暁劇場」を運営している。『燕子』、『焦土』などの社会問題を扱った作品や、張曼娟、黄春明、三島由紀夫、宮部みゆきなどの文学作品の改編シリーズや、「夏日微涼夜話」シリーズなどの怪談を制作している。 万華を拠点とする「暁劇場」は、コミュニティの演劇クラスを開設し「水獺計画」の公演も行っている。また、「南海発展センター」と共同で、身心障害者のための演劇クラスを開設するインクルーシブシアターも行っている。 近年、万華では「艋舺国際舞踏節－Want-to-Dance Festival」が開催され、国内外のダンサーによる芸術交流と公演の場となっている。