★ひとつの物語、三つの視点。〈自分〉探しのリアルな傑作

『Hikikomori』は、未来をモチーフとした自分探しの物語です。革新的なサウンドデザインを用い、「存在を理解する方法」は「存在すること」と同じように多様であることを私たちに気づかせてくれます。現代人が抱える孤独や疎外を見つめ直す、ひとつの実験的な試みでもあります。

ニースは学校にも社会にもなじめない少年です。ある日、彼は部屋に閉じこもり、永遠に外の世界との接触を絶つことを決意しました。外とのつながりは、スマートフォンでのメッセージのやりとりと、食事を部屋の前に置いてくれる両親だけ。しかし時間がたつにつれて両親の心身にも深刻な影響を与えてゆき、とうとうある日、父親はこの隔たりを打ち破ろうと決意します。

本作は、リヨン新世代劇場芸術監督のヨリス・マテューと、アートユニット「オエクール・アートコレクティブ」による共同創作作品です。日本特有の社会現象「引きこもり」から着想を得たもので、長期にわたり外界との接触を断ち、学校にも会社にもいかず、仕事もせず、他者との関わりを持たない「引きこもり」について考察します。観客はイヤフォンを付け、母、父、息子それぞれの視点から物語を体験します。三人の心のに耳を傾け、ニースの心の世界を感じることで、その複雑な真実を知り、彼に一体何があったのかを探っていきます。

これは新しい形の観劇体験で、毎回上演後には座談会が行われ、観客の皆さまがそれぞれの視点から受け取った印象や感情を共有し、登場人物たちの選択をめぐって語り合います。物語の背後に隠された、人びとの心を揺さぶるような感情や思いを掘り起こす機会となるでしょう。

オ・エ・クール・アートコレクティブ（Haut et Court collective）

ジョリス・マチューを中心に、優れたアーティスト、俳優、クリエイターたちが集い結成された。継続的な共同創作を通じて、独自のスタイルを形成している。作品は、現代社会に疑問を投げかけ、未来を描き出すことで、新たな舞台体験を創造する。テクノロジーをパフォーマンスに融合させ、詩的で壮観な情景を提示することで、観客との間に特別なつながりを築いている。その創作形式は演劇的で、映像、文学、音楽、新しいテクノロジーの運用を巧みに組み合わせている。人と世界をバーチャルに表現することに焦点をあてており、舞台に映像を浮かび上がる演出で、豊かで素晴らしい体験を描き出している。

Playwright & Director/ Joris Mathieu with Haut et Court collective
Performer/ Philippe Chareyron, Vincent Hermano, Marion Talotti
Set Design/ Nicolas Boudier, Joris Mathieu
Composer/ Nicolas Thévenet
Lighting Design/ Nicolas Boudier
Video Design/ Loïc Bontems, Siegfried Marque
Stage Manager/ Didier Hirth

Production/ Théâtre Nouvelle Génération - Centre dramatique national de Lyon
Co-Production/ Le Grand R - Scène Nationale de La Roche-sur-Yon